# Supabase まとめ:Firebase との比較、費用、メリット・デメリット
Supabase は、PostgreSQL をベースとしたオープンソースの Backend-as-a-Service(BaaS)プラットフォームです。Firebase のオープンソース代替として注目を集めており、開発者がサーバーインフラを管理することなく、バックエンド機能を迅速に構築できるサービスです。
# Supabase とは
Supabase は、PostgreSQL データベースを中心とした BaaS プラットフォームで、以下の主要機能を提供しています。
# 主要機能
- PostgreSQL データベース: リレーショナルデータベースとして PostgreSQL を使用
- 認証(Authentication): メール/パスワード、マジックリンク、ソーシャルログインなど
- リアルタイム(Realtime): データベース変更のリアルタイム購読
- ストレージ(Storage): ファイルアップロードと管理
- Edge Functions: Deno ランタイム上で動作するサーバーレス関数
- Row Level Security(RLS): データベースレベルでの細かいアクセス制御
# 特徴
- オープンソース: 完全にオープンソースで、セルフホスティングも可能
- PostgreSQL ベース: 標準的な SQL クエリが使用可能
- TypeScript サポート: 型安全性を重視した開発が可能
- 自動生成 API: RESTful API と GraphQL API が自動生成される
- ローカル開発環境: Docker を使用したローカル開発環境が提供される
# Firebase との比較
Supabase と Firebase は、どちらも BaaS プラットフォームですが、アーキテクチャや機能に大きな違いがあります。
# データベース
| 項目 | Supabase | Firebase |
|---|---|---|
| データベースタイプ | PostgreSQL(リレーショナル) | Firestore(NoSQL) |
| クエリ言語 | SQL | Firestore クエリ |
| JOIN 操作 | ネイティブサポート | サポートなし(データの非正規化が必要) |
| トランザクション | ACID トランザクション完全サポート | 限定的なトランザクション |
| スキーマ管理 | スキーマ定義が必要 | スキーマレス |
Supabase の利点:
- 複雑なリレーションシップを持つデータ構造に適している
- SQL の知識があれば、既存のスキルを活用できる
- JOIN や集計関数など、標準的な SQL 機能が使用可能
Firebase の利点:
- スキーマレスで柔軟なデータ構造
- 高速な読み書きが可能
- 水平スケーリングが容易
# 認証とセキュリティ
| 項目 | Supabase | Firebase |
|---|---|---|
| 認証方式 | メール/パスワード、マジックリンク、ソーシャルログイン、電話認証 | メール/パスワード、匿名認証、ソーシャルログイン、電話認証 |
| セキュリティルール | Row Level Security(RLS)- SQL ポリシー | Firebase Security Rules - JavaScript ライクな構文 |
| アクセス制御 | データベースレベルでの細かい制御 | サービスごとのルール定義 |
Supabase の利点:
- RLS により、データベースレベルでアクセス制御が可能
- SQL ポリシーで複雑な条件を定義できる
- データベースとセキュリティが統合されている
Firebase の利点:
- 匿名認証が利用可能
- より成熟した認証機能
- Google アカウントとの統合が容易
# リアルタイム機能
| 項目 | Supabase | Firebase |
|---|---|---|
| リアルタイム同期 | PostgreSQL の論理レプリケーションを使用 | Firestore と Realtime Database でネイティブサポート |
| オフラインサポート | 限定的 | 強力なオフラインサポート |
| 成熟度 | 比較的新しい機能 | 長年の実績がある |
Supabase の利点:
- データベース変更をリアルタイムで購読可能
- PostgreSQL の機能を活用
Firebase の利点:
- より成熟したリアルタイム機能
- オフライン同期が強力
- チャットアプリなどに最適化されている
# サーバーレス関数
| 項目 | Supabase | Firebase |
|---|---|---|
| ランタイム | Deno(TypeScript/JavaScript) | Node.js、Python、Go |
| 実行環境 | Edge Functions | Cloud Functions |
| 統合 | Supabase データベースへの直接アクセス | Firebase サービスと Google Cloud Platform との統合 |
Supabase の利点:
- TypeScript が標準サポート
- 低レイテンシのエッジ実行
- データベースへの直接アクセス
Firebase の利点:
- より多くのランタイム選択肢
- Google Cloud Platform との統合
- より成熟したエコシステム
# 料金体系
| 項目 | Supabase | Firebase |
|---|---|---|
| 料金モデル | 階層型プラン(予測可能) | 従量課金(使用量ベース) |
| 無料プラン | 500MB データベース、1GB ストレージ | Spark プラン(制限あり) |
| 予測可能性 | プランに応じた固定料金 | 使用量に応じて変動 |
詳細な料金比較は後述の「Supabase の費用」セクションを参照してください。
# コミュニティとエコシステム
| 項目 | Supabase | Firebase |
|---|---|---|
| オープンソース | 完全オープンソース | プロプライエタリ |
| コミュニティ | 急速に成長中(50,000+ GitHub スター) | 大規模で成熟したコミュニティ |
| セルフホスティング | 可能 | 不可能 |
| ドキュメント | 充実しているが、Firebase より少ない | 非常に充実 |
# Supabase の費用
Supabase は、予測可能な階層型料金プランを提供しています。2025年時点の料金体系は以下の通りです。
# Free プラン(無料)
個人プロジェクトや実験に最適な無料プランです。
- 月間アクティブユーザー(MAU): 50,000 人まで
- データベースストレージ: 500 MB
- ファイルストレージ: 1 GB
- 帯域幅: 5 GB
- API リクエスト: 無制限
- サポート: コミュニティサポート
- 制限: 1週間の非アクティブ後にプロジェクトが一時停止、アクティブプロジェクトは2つまで
# Pro プラン($25/月〜)
本番環境のアプリケーション向けプランです。
- 月間アクティブユーザー(MAU): 100,000 人まで(追加は $0.00325/MAU)
- データベースストレージ: 8 GB(追加は $0.125/GB)
- ファイルストレージ: 100 GB(追加は $0.021/GB)
- 帯域幅: 250 GB(追加は $0.09/GB)
- コンピュートクレジット: $10 分含まれる
- バックアップ: 7日間の日次バックアップ
- ログ保持: 7日間
- サポート: メールサポート
# Team プラン($599/月〜)
チーム向けのプランで、セキュリティとコンプライアンス機能が追加されます。
- Pro プランの全機能
- SOC2 コンプライアンス: 含まれる
- HIPAA コンプライアンス: 有料アドオンで利用可能
- メンバーロール: 読み取り専用、請求管理ロール
- シングルサインオン(SSO): Supabase ダッシュボード用
- サポート: 優先メールサポート(SLA 付き)
- バックアップ: 14日間の日次バックアップ
- ログ保持: 28日間
- コンピュートクレジット: $10 分含まれる
# Enterprise プラン(カスタム料金)
大規模アプリケーション向けのエンタープライズプランです。
- 専任サポートマネージャー
- 稼働時間 SLA
- オンプレミスサポート
- 24×7×365 プレミアムエンタープライズサポート
- プライベート Slack チャンネル
- カスタムセキュリティ質問票
料金はカスタムで、Supabase に問い合わせが必要です。
# 追加料金
プランの制限を超えた場合の追加料金:
- データベースストレージ: $0.125/GB/月
- ファイルストレージ: $0.021/GB/月
- 帯域幅: $0.09/GB
- 認証(MAU 超過): $0.00325/MAU
# 料金の特徴
Supabase の料金の利点:
- 予測可能性: プランに応じた固定料金で、予算計画が容易
- 透明性: 追加料金が明確に定義されている
- スケーラビリティ: 必要に応じて段階的にアップグレード可能
Firebase との比較:
- Firebase は従量課金モデルのため、使用量が増えると予測が難しい
- Supabase は固定プラン + 追加料金で、より予測可能なコスト管理が可能
# Supabase のメリット
# 1. PostgreSQL の強力な機能を活用できる
- 標準的な SQL クエリが使用可能
- JOIN、集計関数、ウィンドウ関数など、リレーショナルデータベースの機能をフル活用
- 既存の SQL スキルをそのまま活用できる
# 2. オープンソースでセルフホスティング可能
- 完全にオープンソースのため、コードを確認・カスタマイズ可能
- セルフホスティングが可能で、ベンダーロックインを回避
- コミュニティによる活発な開発と改善
# 3. 予測可能な料金体系
- 固定プランベースの料金で、予算計画が容易
- 追加料金が明確に定義されている
- Firebase のような予期しない高額請求のリスクが低い
# 4. Row Level Security(RLS)による細かいアクセス制御
- データベースレベルでのセキュリティポリシー定義
- SQL を使用した柔軟なアクセス制御
- アプリケーションコードとデータベースのセキュリティが統合
# 5. TypeScript の標準サポート
- Edge Functions で TypeScript が標準サポート
- 型安全性を重視した開発が可能
- 自動生成される API クライアントも TypeScript 対応
# 6. 自動生成される RESTful API と GraphQL API
- データベーススキーマから自動的に API が生成される
- 手動での API エンドポイント作成が不要
- OpenAPI 仕様も自動生成される
# 7. ローカル開発環境の提供
- Docker を使用したローカル開発環境
- 本番環境と同等の環境で開発・テストが可能
- オフラインでも開発可能
# 8. リアルタイム機能
- PostgreSQL の論理レプリケーションを活用したリアルタイム購読
- データベース変更をリアルタイムで監視可能
- チャットアプリやコラボレーションツールに適している
# Supabase のデメリット
# 1. Firebase と比較して成熟度が低い
- 2019年に開始された比較的新しいサービス
- 一部の機能がまだ開発中または改善の余地がある
- コミュニティやドキュメントが Firebase ほど充実していない
# 2. リアルタイム機能の成熟度
- リアルタイム機能は比較的新しく、Firebase ほど成熟していない
- オフラインサポートが限定的
- 複雑なリアルタイムシナリオでは Firebase の方が優れている場合がある
# 3. NoSQL の柔軟性がない
- PostgreSQL ベースのため、スキーマレスな開発は難しい
- データ構造の変更にはマイグレーションが必要
- 柔軟なデータ構造が必要な場合、Firebase の方が適している
# 4. モバイル SDK の充実度
- Firebase と比較して、モバイル SDK の機能や成熟度が低い
- 特にネイティブモバイルアプリ開発では、Firebase の方が優れている場合がある
# 5. エコシステムの規模
- Google が提供する Firebase と比較して、エコシステムが小さい
- サードパーティツールや統合が少ない
- 学習リソースが Firebase ほど豊富ではない
# 6. スケーリングの複雑さ
- PostgreSQL のスケーリングは NoSQL と比較して複雑な場合がある
- 大規模な水平スケーリングが必要な場合、Firebase の方が適している可能性がある
# 7. 学習曲線
- SQL の知識が必要(ただし、これはメリットでもある)
- RLS ポリシーの理解と実装に時間がかかる場合がある
- Firebase の方が初心者には簡単な場合がある
# どちらを選ぶべきか
# Supabase が適している場合
- リレーショナルデータ構造: 複雑なリレーションシップを持つデータ
- SQL スキルがある: 既存の SQL 知識を活用したい
- 予測可能なコスト: 固定プランで予算管理をしたい
- オープンソース重視: セルフホスティングやカスタマイズが必要
- 細かいアクセス制御: RLS によるデータベースレベルのセキュリティが必要
- TypeScript 重視: 型安全性を重視した開発
# Firebase が適している場合
- 迅速なプロトタイピング: スキーマレスで柔軟な開発
- リアルタイム同期: 強力なリアルタイム機能とオフラインサポートが必要
- モバイルアプリ: ネイティブモバイルアプリの開発
- Google エコシステム: Google サービスとの統合が必要
- 大規模スケーリング: 自動的な水平スケーリングが必要
- 成熟したエコシステム: 豊富なドキュメントとコミュニティサポートが必要
# まとめ
Supabase は、PostgreSQL をベースとしたオープンソースの BaaS プラットフォームで、Firebase の強力な代替として注目を集めています。SQL の知識を活用でき、予測可能な料金体系、細かいアクセス制御などが特徴です。
一方で、Firebase と比較して成熟度が低く、リアルタイム機能やモバイル SDK の充実度に課題があります。
プロジェクトの要件、チームのスキル、長期的な目標を考慮して、適切なプラットフォームを選択することが重要です。リレーショナルデータ構造と SQL を活用したい場合は Supabase、迅速なプロトタイピングと強力なリアルタイム機能が必要な場合は Firebase が適しているでしょう。
# 推奨される判断基準
- データ構造: リレーショナル → Supabase、柔軟な構造 → Firebase
- スキルセット: SQL スキルあり → Supabase、NoSQL 経験 → Firebase
- コスト管理: 予測可能なコスト → Supabase、従量課金 OK → Firebase
- オープンソース: 必要 → Supabase、不要 → どちらでも可
- リアルタイム機能: 標準的な機能で十分 → Supabase、強力な機能が必要 → Firebase